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Torch Tower(常盤橋プロジェクトB棟)は世界一巨大な超高層建築物か?

こんにちは、むぅんです。

今回は普段の投稿とまったく異なる話題ですが、前々から記事にしたかったことについてです。

【2020/9/18追記】名称およびデザインの変更について一部追記しました。


常盤橋プロジェクトについて

常盤橋プロジェクトは、東京都千代田区大手町と中央区八重洲に4棟からなる超高層ビル群を建設する一大プロジェクトです。
現在これらの建物はA棟からD棟の仮称で呼ばれていますが、その中のB棟は現在日本で最も高い超高層建築物であるあべのハルカス(高さ300m)を有に超える390mという高さで建築される予定であることから日本中で注目されている計画となります。

【2020/9/18追記】常盤橋プロジェクトにより開発される街区の名称がTOKYO TORCHとなることが三菱地所より発表されました。同時に、A棟の名称は常盤橋タワー、B棟の名称はTorch Towerとなるようです。この記事では以降の名称を差し替えておりません。あらかじめご了承ください。
また、"Torch"(松明)の名称の通り、B棟は松明をイメージしたデザインに大きく変更されました。よって、下図を最新のものに変更しました。

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常盤橋タワー(旧名称A棟・左)とTorch Tower(旧名称B棟・右)(画像は内閣府より)


真ん中にあるひときわ大きな建物がB棟になります。その左側にある建物はA棟で、高さは212mです。
この画像の恐ろしいところは、隣の小さく見えるA棟は現在日本有数のビル群であり常盤橋プロジェクトの計画地でもある大手町・八重洲エリアに竣工済みのいかなる建物よりも高い点にあります。隣に日本一高いビルがあるため相対的に低く見えますが、A棟が既にこのエリアで最も高いと聞くとまるで何かのバグみたいです(この近辺で次点で高いのは隣接する丸の内にあるグラントウキョウノースタワー・サウスタワーの204.9mになります)。


話をB棟に戻します。高さに注目しても勿論凄いのですが、その延床面積はもっとすさまじいことになっています。延床面積というのはその建物の床の面積をすべて足し合わせたものです(バルコニーの一部や吹き抜けなど含まれない部分もありますが詳細な定義はここでは触れません)。建物の大きさを純粋に比較すること(正確な容積を調べること)は困難ですが、延床面積を見ることである程度その建物の大きさをイメージできるため一般的によく用いられる指標です。もちろん、正確な大きさを比較できるわけではないのですが、ここでは「広さ」と「大きさ」という用語を併用することをあらかじめご了承ください。
B棟の延床面積は何と1棟で490,000m²です。これがどれくらいすさまじいのかイメージが湧きにくいと思いますが、具体的な例を挙げると、世界一高い建築物であるドバイのブルジュ・ハリファ(高さ828.9m)の延床面積は464,511m²です。つまり、B棟は世界一高い建築物よりも延床面積が広いのです。


ここで一つ疑問が生じます。


「あれ、もしかして常盤橋プロジェクトB棟は世界一延床面積が広い建築物なのでは?」


そう思いいつか具体的に調べてみようと思っていたのですが、本日目を疑うようなニュースが目に飛び込んできました。

B棟の延床面積が変更される

https://www.kensetsunews.com/archives/461165www.kensetsunews.com


なんと、B棟の延床面積が上方修正されることになったのです。その広さは、驚異の545,000m²です。既に信じられないくらい巨大な建築物であったのに、そこから更に55,000m²も上乗せされることとなったのです。ちなみに、55,000m²というのは国会議事堂(53,464m²)とほぼ同じ広さです。国会議事堂も決して小さくはないのですが、B棟の10%ほどしかないと聞くとやはり頭がバグりそうですね。スケールがまるで違います。


なお、高さに変更はなく、またフロアの数も大きく変わったわけではない(地上61階・地下5階から地上63階・地下4階)ことから、デザインに何かしら変更があると踏んでいます。せっかくなら400mを目指してほしかったところですが、まだ着工されたわけではないため今後さらなる上方修正に期待したいと思います。

【2020/09/18追記】予想通り、デザインが大きく変更されることとなりました。また、その後のリリースでTorch Tower(B棟)の延床面積がわずかに減少し544,000m²となることが判明しました。(https://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/kokusentoc/tokyoken/tokyotoshisaisei/dai18/shiryou1.pdf


かつて世界一巨大だった建築物

さて、皆さんはアブラージュ・アル・ベイト・タワーズという建築物をご存知でしょうか?サウジアラビアのメッカにある尖塔高601mの超高層建築物で、現在世界で3番目の高さを誇ります。

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時計の針が指す時刻は25km先からでも視認できると言われている(画像はWikipediaより)


この建築物の延床面積は1,575,815m²です。バケモンか?
しかし、この数字にはちょっとしたからくりがあり、アブラージュ・アル・ベイト・タワーズというのは7棟からなる複合ビルなのです。これをすべてがくっついた単一のビルとみなすか7棟別々のビルとみなすかは明確な定義もないため決めることは難しいのですが、これを単一とするとこれ以上話が進まなくなるのでここでは別々のものとします(本音を言うと、個々は完全に独立しているわけではなく下でくっついているっぽいので単一とみなしても良いと思います。というか、最も高いホテル棟だけの延床面積を調べても全然出てこない(=全部くっついて一つとみなされてる?)のでぶっちゃけ多分これが一番広いと思います)。


現在、世界で最も延床面積の大きな建築物は、中国の成都市にある新世界環球中心です。その延床面積は1,700,000m²とインフレが止まりませんが、これは幅400m、奥行き500m*1とひたすら横に広い建築物であり、超高層建築物ではありません(どこから超高層建築物と呼ぶかといった定義はありませんが、日本では100m、イギリスでは150mとされている事例があるようです。いずれにせよ、一般の人が想像する「ビル」の形とはまるで異なるものです)。


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中国の建築物はとにかくスケールが違う(画像はWikipediaより)


現在、この規模の超高層建築物は計画すらされておらず、「最も延床面積の大きい超高層建築物」はアブラージュ・アル・ベイト・タワーズで間違いないでしょう。では、「複数のビルが連なった複合ビルを除いた超高層建築物で最も延床面積が大きい」ものはどうでしょうか?
この世にあるすべての超高層建築物の延床面積を調べるのは不可能なので、ここではWikipediaの記事にある「350m以上の超高層建築物」に限定して調べてみたいと思います。特に注釈がないものはいずれもWikipediaの日本語または英語の記事に掲載されている値です。


高さが350m以上の超高層建築物の延床面積リスト(2020年6月現在)

※表はスクロール可能です。表が大きいためPCからご覧の方は操作が難しいと思いますが、ドラッグをご利用いただくと若干見やすくなります。


延床面積の順位 高さの順位 ビル名 都市 高さ[m] 延床面積[m²] 注釈
1 3 アブラージュ・アル・ベイト・タワーズホテル棟 メッカ 601 m 1,575,815 m² 7棟の合計
2 41 深業上城 深圳 388.1 m 895,700 m² 4棟+αの合計*2
3 18 長沙IFSタワーT1 長沙 452.1 m 725,000 m² 2棟+αの合計*3
4 36 海雲台LCTザ・シャープ・ランドマーク・タワー 釜山 411.6 m 660,077 m² 3棟の合計
5 1 ブルジュ・ハリファ ドバイ 828 m 464,511 m² 世界一高いビル
6 22 The Exchange 106 クアラルンプール 445 m 453,835 m²
7 25 広州国際金融センター(広州西塔) 広州 440.2 m 448,000 m²
8 10 中国尊 北京 528 m 427,000 m²
9 50= フェデレーション・タワー(東棟) モスクワ 374 m 423,000 m²
10 46= フォーラム66 1 瀋陽 384 m 420,000 m²
11 11 ウィリス・タワー(旧シアーズ・タワー) シカゴ 527.3 m 418,064 m²
12 12 台北101 台北 509.2 m 412,500 m²
13 8= CTF金融センター(広州東塔) 広州 530 m 398,000 m²
14 4 平安国際金融中心 深圳 600 m 385,918 m²
15 13 上海ワールド・フィナンシャル・センター 上海 492 m 381,600 m² *4
16 2 上海中心 上海 632 m 380,000 m²
17 5 高銀金融117 天津 597 m 370,000 m²
18 20= 蘇州国際金融センター 蘇州 450 m 368,000 m² *5
19 19 ペトロナスツインタワー(2棟) クアラルンプール 452 m 360,750 m² 2棟の合計*6
20 6 ロッテワールドタワー ソウル 555 m 327,137 m² *7
21 26 武漢センター 武漢 438 m 321,400 m²
22 58 JW・マリオット・マーキス・ドバイ・ホテル(2棟) ドバイ 355 m 320,314 m² 2棟の合計
23 63= 西安国瑞国際金融中心 西安 350 m 289,978 m²
24 32 ジンマオタワー(金茂大厦) 上海 421 m 289,500 m²
25 46= 信興広場 深圳 384 m 273,349 m²
26 39 中国華潤大廈 深圳 392.5 m 268,713 m²
27 14 環球貿易広場(ICC 香港 484 m 262,176 m²
28 17 ジョン・ハンコック・センター シカゴ 457.2 m 260,126 m²
29 23 エンパイア・ステート・ビルディング ニューヨーク 443.2 m 257,221 m²
30 8= 天津CTF金融センター 天津 530 m 252,144 m²
31 60 OKO モスクワ 354 m 249,600 m²
32= 7 1 ワールドトレードセンター ニューヨーク 541 m 240,000 m²
32= 31 トランプ・インターナショナル・ホテル&タワー シカゴ 423.4 m 240,000 m²
32= 43 30ハドソン・ヤード ニューヨーク 386.6 m 240,000 m²
35 24 京基100 深圳 442 m 220,000 m²
36 40 CITICプラザ(中信広場) 広州 391.1 m 205,239 m²
37 15 ランドマーク81 ホーチミン 469 m 205,000 m²
38 55 バンク・オブ・アメリカ・タワー ニューヨーク 365.8 m 200,000 m²
39 33 国際金融中心 (香港) 香港 415.8 m 185,805 m²
40 45 キャピタル・マーケット・オーソリティ本部ビル リヤド 385 m 185,000 m² *8
41 50= セントラルプラザ 香港 374 m 172,798 m²
42 34 プリンセス・タワー ドバイ 414 m 171,175 m²
43 16 ラフタ・センター サンクトペテルブルク 462 m 170,000 m² *9
44 28 ワン・ヴァンダービルト ニューヨーク 427 m 162,600 m²
45 57 アルマスタワー ドバイ 363 m 160,000 m²
46 30 マリーナ101 ドバイ 425 m 153,920 m²
47 49 エリートレジデンス ドバイ 381 m 140,013 m²
48 38 23マリーナ ドバイ 395 m 139,544 m²
49 20= 紫峰タワー 南京 450 m 137,529 m²
50 54 中国銀行タワー 香港 367 m 135,000 m²
51 56 ビスタタワー シカゴ 365 m 131,400 m²
52 62 ザ・ピナクル 広州 350.3 m 118,452 m²
53= 37 華潤大厦A座 南寧 403 m 100,000 m² *10
53= 59 エミレーツ・オフィス・タワー ドバイ 354.6 m 100,000 m²
55 35 アル・ハムラ・タワー クウェートシティ 414 m 98,000 m²
56 42 イートン・プレース大連 大連 388 m 62,300 m² *11
57 29 432 パーク・アベニュー ニューヨーク 425.5 m 38,335 m²
58 27 111 西57丁目(ステインウェイ・タワー) ニューヨーク 435 m 29,357 m² 世界一細いビル
59= 44 ローガン・センチュリー・センター 南寧 386 m 不明
59= 48 セントラル・マーケット アブダビ 382 m 不明
59= 52 大連国際貿易センター 大連 370.1 m 不明
59= 53 ザ・アドレス・ザ・BLVD ドバイ 368 m 不明
59= 61 フォーラム66 2 瀋陽 351 m 不明
59= 63= 漢京中心 深圳 350 m 不明



見ての通り、常盤橋B棟より広い超高層建築物はいずれも複数のビルからなる建物だということがわかります。これはやはりB棟が世界一の座に輝くのか!?


上海中心は本当に380,000m²?

しかし、世界で2番目に高い上海中心の公式ホームページには、以下のように書かれています。

www.shanghaitower.com.cn

“上海中心”位于中国上海浦东陆家嘴金融贸易区核心区,是一幢集商务、办公、酒店、商业、娱乐、观光等功能的超高层建筑,建筑总高度632米,地上127层,地下5层,总建筑面积57.8万平方米,其中地上41万平方米,地下16.8万平方米,基地面积30368平方米,绿化率33%,“上海中心”是目前已建成项目中中国第一、世界第二高楼。


この情報によると、上海中心は地上こそ410,000m²とB棟よりもやや小規模なものの、168,000m²もある地下空間を合わせると578,000m²となり、わずかではありますが上方修正されたB棟より更に規模が大きいということになります。


地下空間をどう考慮するか?

上海中心は、127階もある地上部分に対し地下はわずか5階しかないにもかかわらず168,000m²という広大な床面積を有していることから、かなりの規模の地下空間であることが伺えます。どんな形であれ、その施設の一部であるなら延床面積に含まれるのは当然ですが、「ビルの巨大さ」を測る上ではまた違った話になってきます。
もちろん上海中心の地下空間を認めないとすると、B棟の地下空間の延床面積も同様に全体から引かなければなりません。上海中心ほどではないにしろ、地上63階・地下4階という地下が占める割合は決して大きなものではありませんが、こちらも地下が階数から想像できる以上に広い可能性もあり、ランキングに大きく関わることも考えられます。
更に、それ以外のすべての建築物の地下も同様に考えなくてはなりませんが、当然その作業は単純に延床面積を調べる以上にコストがかかる(そもそも地上と地下で分けて延床面積が公開されている可能性は低い)ことからもやはり現実的ではありません。そもそもWikipediaには380,000m²という公式が示した地上部分の延床面積ですらない値が掲載されていたことからも、その延床面積の正しさや、地下を含むか否かなどの正確性に欠けることもわかります。世界共通の基準である高さと異なり、各国で異なる基準により計測された延床面積を同列に語ること自体間違ったことなのかもしれませんね。


したがって、ここでは延床面積を見ることで容積がわからずともある程度建築物の大きさを知ることは可能だが、それには限界があると結論づけます。

結論

常盤橋プロジェクトB棟は計画段階で延床面積545,000m²を誇る世界最大級の超高層建築物。ただし、地下を含むと578,000m²の上海中心のほうが更に広い。
加えて、複数のビルからなる超高層建築物を含めるとアブラージュ・アル・ベイト・タワーズが世界一(7棟の合計で1,575,815m²)である。


あとがき

いやー、めちゃくちゃ疲れました。Wikipediaならだいたいのことは載っているだろうと高をくくっていましたが、蓋を開けてみれば延床面積に関する情報は多くの記事で欠けており、しかも日本語・英語・中国語を駆使してググれば割と情報が出てくるという…。恐らくこんなに「平方米(中国語の平方メートル・m²)」でググる機会もそうないと思います。
もちろんこの情報が全て正しいとは限りませんし、もっと色々調べたほうが良かった気もしますが今回はこれで勘弁してください。もし脚注のリンク先の情報が正しいなら、誰かWikipediaの記事に追加しておいてくれると嬉しいです…。

そもそもこの記事を書こうと思ったきっかけは、ネット上の様々な場所で「日本のビルは低すぎる」「世界に遅れている」などと言われているのを度々目にすることからでした。確かに日本は様々な要因により世界に肩を並べるような高さのビルはほとんどありません。特に300mを超える「スーパートール」と呼ばれる超高層建築物は、竣工済みのものであべのハルカスの1棟のみ、今後予定されているものも常盤橋B棟を含めたったの2棟です。
しかし、日本のビルは世界に類を見ないほど巨大です。というより、圧倒的に太いといったほうが正しいかもしれません。当然どのようなビルをかっこいいと思うかは人それぞれですし、世界にある細くひたすら縦に長いビルも魅力的ですが、日本のビルはとにかく1棟1棟が圧巻のインパクトなのです。高さでは負けていても、大きさでは十分世界トップレベルだということを少しでも知っていただけたらと思います。B棟だけでは不十分なので、後におまけとして日本のビルの記事も上げようと思っています。そちらも合わせてご覧いただけたら幸いです。

また、情報の間違いに気付かれた方、延床面積不明となっているところの広さをご存じの方、そして何よりもっと大きな建築物をご存じの方は是非コメント欄で教えていただけると助かります。それでは。

*1:"世界最大の単体建造物に賛否両論、中国", https://www.afpbb.com/articles/-/2955702

*2:"深業上城 - 深圳控股有限公司 深圳項目", http://www.shenzheninvestment.com/c/projects_artical_11.php

*3:"Changsha IFS", https://www.wongtung.com/en/projects/changsha-international-finance-square/

*4:"「上海環球金融中心」(上海ワールドフィナンシャルセンター)始動 ~上海の新たな金融・情報発信の中心、グローバルマグネット誕生~", https://www.mori.co.jp/company/press/release/2008/08/20080828120000000410.html

*5:"江蘇で最も高いビルである蘇州国際金融センターへの最終的な美化工事が行われ", http://www.sipac.gov.cn/japanese/categoryreport/InfrastructureEcology/201706/t20170616_575262.htm

*6:"ペトロナスツインタワー", http://toolbiru.web.fc2.com/cj4n/d-data-k1.htm

*7:"スターツコリア 不動産情報2016年12月号", https://www.starts.co.jp/cmsdesigner/data/entry/korea_report_pdf/korea_report_pdf.00073.00000001.pdf

*8:"PUBLIC INVESTMENT FUND (PIF) TOWER", https://omrania.com/project/capital-market-authority-headquarters/

*9:"TROSIFOL CASE STUDY ヨーロッパで最も高いビルがトロシフォルを採用", https://www.trosifol.com/fileadmin/user_upload/laminated_news/laktha_tower/Lakhta_Tower_JP.pdf

*10:"每日頭條 南山科技園 華潤置地大廈D座 5A甲級寫字樓物業", https://kknews.cc/house/8xv49bq.html

*11:"大连中心·裕景_百度百科", https://baike.baidu.com/item/%E5%A4%A7%E8%BF%9E%E4%B8%AD%E5%BF%83%C2%B7%E8%A3%95%E6%99%AF/5220235?noadapt=1